ロジックモデルの合理性と矛盾点
ロジックモデルは,プログラムを「インプット」→「アクティビティ」→「アウトプット」→「アウトカム」→「インパクト」という流れに沿って可視化するためのツールである。よって,どんなプログラムでも合理的に構造化することが出来る。
しかし,ロジックモデルの各要因に関しては,評価のユニットが同一でないことが矛盾点となる。例えば,インプットは,いわゆるヒト・モノ・カネ・コト(ネットワーク等)といったプログラムに投入される資源である。したがって,もしそれが良しとされるのであれば,プログラムの活動を支えるボランティアの経済的(貨幣)価値を,人数×時間などで換算し評価することが可能となる(例:ボランティアの受入評価益・ボランティア評価費用)。
一方,最も重要なアウトカムの評価では,そのプログラムに参加したことで(そのサービスを利用したことで),参加者・利用者にどのように変化(例えば,KASIと呼ばれる知識・態度・スキル・興味の変化・変容)が認められたかに的が絞られる。そして,その変化を,経済的価値に置き換えて考えることは,少なくとも心理学領域では,一般的ではない。よって,ロジックモデルにおけるインプットとアウトカムの評価の単位(ユニット)は,互いに異なることになる。これが矛盾点である。
演習やワークショップでロジックモデルを作成する意義や目的は,それをもとに厳密な評価計画を立てるのではなく,プログラム全体を俯瞰し(可視化し),どのような指標や尺度を用いて,どこからデータ収集を行うかなどの検討材料にするところにあると考えている。