行動レベルの評価

研修プログラムの実施後に学習者に起こる行動の変化が「行動レベル」の評価である。研修プログラムにおけるステークホルダー,即ち人材育成などを依頼する側やプログラムの運営側が知りたいのは,研修後に本当に社員・従業員の行動に望ましい変化があったのかである。

そのため,一般的な研修評価では,研修を行った結果,実際に生じた行動の変化のみに注意が払われることが多い。一方で,カークパトリックは,先にみた「反応レベル」と「学習レベル」の評価を行わずに,一足飛びに「行動レベル」の評価を行い,その結果を参考にして研修プログラムの良し悪し(cf. 価値)を評価することに対して警鐘を鳴らしている。行動レベルの変化は少なくとも以下の4つの段階を経てから起こるからである(Kirkpatrick & Kirkpatrick, 2006, p. 23):

  1. 学習者自身が実際に(行動レベルの)変化を望んでいる。
  2. 何を(what),どのように(how)すれば変化できるかを学習者が分かっている。
  3. 学習者が適切な環境(right climate)で働いている。
  4. 学習者が行動を変化することに対して,報酬ややりがい(rewarding)を得られる。

上記の①と②に関しては,研修プログラムによって習得可能なものではあるが,③と④は,研修後の職場での状況,なかでも上司との関係性の質に左右されることになる。したがって,いかに研修プログラムの内容や目的が職場全体に共有されているか,いかに上司が研修後の部下(学習者)の行動をサポートできるかが鍵となる。

 

安田節之(2019,1月)研修効果測定とサクセスケース・メソッドによる体系的な研修評価アプローチの検討 試験と研修,45,印刷中