外部・内部ベンチマーキング:メモ
ベンチマーキングではその対象を外部に求めるのか,あるいは内部に求めるのかという点がまず考慮される。つまり,外部の組織・プログラムのベストプラクティス(BP)をベンチマークするのか,あるいは自組織・内部のBPをベンチマークするのかということが,それぞれ外部ベンチマーキング(external benchmarking),内部ベンチマーキング(internal benchmarking)という枠組みのなかで検討される。
以前にみたベンチマーキングの先駆けとなったゼロックス社の場合,生産プロセスを効率化(安定化,低コスト化,ジャスト・イン・タイムなど)するために,異業種・別会社のL.L.ビーンの在庫管理システムをベンチマークした。これは外部ベンチマーキングである。
また身近な例として,過日に行った医療ソーシャルワーク(SW)領域でのプログラム評価の研修において,医療SWでは十分なスーパービジョン体制が整っていない,という課題に基づいたプログラム設計を行っているグループがあった。そこでの議論のなかで,比較的,体制が整っている心理職のスーパービジョンを参考にするのは良いのではないか,という提案があった。
この場合,もし組織内に心理職のスーパービジョンのBPが存在すれば,それが内部ベンチマーキングの対象となるし,別組織にBPと考えられる体制があるのであれば,それは外部ベンチマーキングの対象となる。重要な点は,同じ領域だけでなく別領域のBPがベンチマーキングの対象となり得るということである。ゼロックス社の例のように,むしろその方が創造的な問題解決が可能になるとも言える。
営利・非営利を問わず異業種や多職種における情報交換会や交流会などがあり,そこでインフォーマルなやりとりがあるが,ベンチマーキングの場合はよりフォーマルな形で組織内外のBPに関する研究が行われることになる。その際に最も重要かつ困難な作業が測定(measurement)である。何をどう測るのか(べきか)ということを見極めることがその後の展開(改善・質向上)の肝となる。これまで学んできた心理測定の考え方と所謂ベストプラクティス・ベンチマーキングを包括的に捉えるTQM(Total Quality Management)における測定の考え方に違いがあるので(例えば「信頼性(reliability)」の考え方),その点を掘り下げる必要がある。