サステナブルな地域プログラムの運営

持続可能・自立発展的(サステナブル)な地域プログラムの運営とは何かについて検討している。ここでのプログラムとは一般に,非営利かつ自発的(ボランタリー)で地域をベースにした活動である。

以前に行った調査では,プログラムのロジックモデルで言うところの「活動(アクティビティ)」に関しては「リーダーシップ」と「コミュニティ感覚」の両方が奏功していたが,活動への参加状況などを示す「アウトプット」,効果を表す「アウトカム」には「コミュニティ感覚」のみが影響を及ぼしていた。

ここでのコミュニティ感覚とは,プログラムの運営主体(=コミュニティ)に対する帰属意識のようなものである(例:「この会の人々はお互いを尊重し合っている」「この会は自由に(オープンに)意見を言える雰囲気である」「この会の人々は,信頼できる人々ばかりだ」)。他に「エンパワメント」と「レディネス」の要因も検討したが,これらの影響は特に認められなかった。

当たり前のように思えるが,コミュニティ感覚が地域プログラムの運営には欠かせない要因であることが実際にデータで示された。裏を返せば,そもそもコミュニティ感覚が存在しない地域プログラムは望ましいアウトプットやアウトカムを産出することが出来ないとも言える。従って,サステナブルな地域プログラムの運営を実現するためには,リーダーシップを醸成する,準備性(レディネス)を高める,といったこと以前に,運営に携わる人々のコミュニティ感覚を高めることが必要条件となる。サステナブルな地域プログラムがそこまで多くない現状を踏まえると,このコミュニティ感覚がなかなか高まらないのが現状であろうか。

参考: コミュニティ介入の効果を高める組織特性の検討:臨床心理地域援助における評価研究の試みとして 安田節之 臨床心理学   14(3) 402-411   2014年5月