評価結果の活用
プログラムに関する評価活動が結実する,つまり“評価結果が何らかの意思決定やアクションに利用・活用(use)される”ための影響要因は,政治的要因(political factor)とステークホルダーの個人的要因(personal factor)に大別できるとされる。前者の政治的要因への配慮については(例:評価者としてどのように評価活動をマネジメントしていくか),Utilization-Focused Evaluation(UFE:実用重視型評価)の枠組みで体系的に捉えられている。
一方,後者の個人的要因に関しては,ステークホルダーが評価活動のすべての側面(例:評価対象,方法論,結果の活用法)に対して前向きであることが,実り多い評価のために欠かせないとされる。ステークホルダーは,プログラムの責任者・運営者であることが多く,通常,リーダーシップ,熱意,自己決定力を有しているため,彼らが評価に積極的であれば(”buy-in”),評価結果をもとにした意思決定・アクションにつなげやすい。
逆に言うと,いくら良い評価計画や評価方法論があったとしても,ステークホルダーが評価実施に乗り気でなかったり,あるいは,評価の依頼者が評価結果に基づくアクションを行えるだけのパワー(実行力・権力)を有していなければ,評価自体が無意味なものになる。当然と言えば当然ではあるが,このような評価に関するパーソナルな要因は1970年代当時の評価研究では取り上げられておらず,それがUFEの体系化に向けた問題意識であったとされている。
このように考えると,評価者(evaluator)は,評価結果を活用することが出来る立場やパワーを有しているステークホルダー(依頼者)に対して,評価コンサルテーションを行うことが効率的・効果的となる。評価を事業(プログラム)の改善・質向上に活用しようとするソーシャルセクターなどが増えるなか,評価の依頼者がどの程度,評価結果を活用する気があるか,アクションを起こせる立場にあるかを確認し,評価を計画する際には依頼者の評価ニーズを組み込みつつ進めることが,UFEを効率的に実施するコツと言えそうである。UFEはステークホルダーの価値や評価ニーズを重視しており,プログラムの改善・質向上のための評価に適している。
参考: Patton, M. Q (2012, pp. 61-86). Essentials of Utilization-Focused Evaluation. Sage.
ディスカッション: 意思決定にあまり関与していない(例:立場・パワー)依頼者に対して評価者はどのような対応をすべきか。具体的な依頼者の例は。この点に関して,UFEとエンパワメント評価のアプローチにはどのような違いがあると考えられるか。またUFEをアカウンタビリティ目的の評価に活用する際にはどのような点を考慮する必要があるか(中立性・客観性など)。