心理学特殊講義Ⅳシラバス(2017年度,上智大)
プログラム評価論(心理学特殊講義Ⅳ)[2017 秋学期]
水曜・3限(13:30~15:00)
担当教員:安田節之
■ 授業の概要
心理学諸領域には,対人援助やコミュニティ援助といった臨床心理地域援助をはじめ,企業組織での人材育成や地域活性化を目的とした多様なプログラムやサービス(実践・介入活動)が存在する。そして,ただ単にプログラムやサービスを提供するだけでなく,それが利用者にどのような効果や成果をもたらしたのかを客観的に捉え,科学的根拠(エビデンス)として提示することが求められている。
本授業では,主に心理学の専門性に基づいた実践・介入活動をプログラムの視点から構造化し,その効果や成果をデータに基づいて評価し,活動の質向上につなげるための方法論であるプログラム評価について学ぶ。心理学の専門家が携わるプログラムは,広くは社会問題(社会的な課題)の解決,なかでも利用者やクライエントの心理的ウェルビーイングの向上を目的とすることが多い。しかし,プログラムがもたらす個人への効果や組織的な価値は,経済的指標などでとらえることが困難である。そのため,心理学研究法などの方法論を援用し,プログラムの効果を測定・評価するアプローチをとることになる。この授業では、プログラムを客観化する手順をまず習得し,そのうえで,プログラムを実証的に評価するための方法を学ぶ。
※ 講義と演習(グループワーク)が中心となる授業である。すでに自らが興味・関心のあるプログラムがあることが望ましい。
■ 到達目標
① 心理学諸領域で実施されるプログラムやサービスを構造化するスキルを習得する。
② プログラムの効果・成果を評価するための方法を習得する。
③ プログラムの評価計画を立てられるようになる。
■授業スケジュール
- イントロダクション
- プログラムとは何か,プログラム評価の定義
- 問題・課題の分析,プログラムニーズの種類とアセスメント
- ゴールの可視化・構造化
- インパクト理論の検討
- ロジックモデルの開発①
- ロジックモデルの開発②
- グループ発表①(プログラムの可視化)
- 評価可能性アセスメントとロジックモデルに基づいた評価クエスチョンの検討
- アウトカム評価とは何か,アウトカム評価指標の作成
- 実験・準実験デザインによるアウトカム評価
- プロセス評価とは何か,プロセス評価の指標と方法の検討
- 評価の焦点化
- グループ発表②(評価計画の策定)
- 授業外の学習課題:エンパワメント・理論主導・実用重視・社会科学の4つの評価アプローチのなかから1つを選び,リアクションペーパーにまとめる。
■ 授業時間外(予習・復習等)の学習
教科書および関連資料の指定箇所のリーディングを行い,授業時に各自(または各グループ)でディスカッションクエスチョンを考えてくる。また復習として,授業でカバーした内容に関して各自(または各グループ)でプログラムの可視化作業を継続的に行う。
■ テキスト等
教科書:
『プログラム評価:対人・コミュニティ援助の質を高めるために』安田節之,新曜社,2011年
参考書:
『Building Evaluation Capacity: Activities for Teaching and Training』Preskill, H., & Russ-Eft, D.,Sage, 2015
『社会的インパクトとは何か:社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド』M. エプスタイン,C. ユーザス (著) 鵜尾雅隆(監修)・鴨崎貴泰・松本裕(翻訳),英治出版,2015年
『プログラム評価研究の方法』安田節之・渡辺直登,新曜社,2008年
■ 参考URL http://wp.me/P94ZyG-Sp