メモ:主観的幸福感の測定について

主観的幸福感・主観的ウェルビーイングの測定によく用いられる人生満足度尺度は5項目で効率的な測定が可能であるが,いわゆる下記のような高次の満足度の測定には向いていないか(不可能であるか)。

”満足した豚であるよりも,満足していない人間がよい。満足した愚者よりも,満足していないソクラテスがよい。愚者や豚がこれと違う意見だったとすれば,それは,問題のうち自分たちにかかわる側面しか,わかっていないからである。これと対極にある人々は,両方の側面がわかっている”(J. S. ミル 著;関口正司 訳 「功利主義」2021, p. 31 岩波文庫)。

心理学領域などでの操作的定義に基づく『人生満足度』の測定の場合,前者が高満足度,後者が低満足度となりそうである。また人生満足度(Life Satisfaction)は,肯定感情(Positive Affect),否定感情(Negative Affect)とともに,主観的ウェルビーイング(Subjective Well-Being)の構成要因のひとつでもある。上記の”満足していない人間”の場合,満足していないが故に,人生満足度は低く,肯定感情は低く,そして否定感情は高くなりそうなので,計算上,主観的ウェルビーイングは低くなる。一般的にウェルビーイングの定義は”よく生きる”(live a good life)である。では上記の”満足していない人間”はよく生きていないかというとそうでもない。このあたりにもウェルビーイングの測定の難しさがある。