システムズ・アプローチに基づいた評価教育

評価教育を行う上で,演習・実習(プラクティカム)の重要性は,多くの評価研究者が指摘するところである(例:Trevisan, 2004)。これは,プログラム評価の関連知識や方法論
の習得はあくまで必要条件であり,実際の評価に携わることで十分条件が満たされることを意味している。プログラム評価の定義や目的に関する知識・スキルは,いわば機械的に習得することが可能であるが,想定した通りにいかない,実際の評価や評価計画について,演習・実習を通して学ぶことが,プログラム評価の学びでは特に重要となる。このような背景をもとに,より実践的に,具体的なプログラム事例を出発点とした評価教育の重要性が指摘された(Darabi, 2002)。教育工学におけるインストラクショナル・システムズ(instructional systems)の発想を応用させた「システムズ・アプローチ」による評価教育である。

このシステムズ・アプローチによるプログラム評価教育では,事例を活用したプログラム評価の計画書(プロポザル)の提出という最終目標に向けて,すべての授業内容がオーガナイズされる。したがって学習者は,自らが取り組もうとしているプログラム事例をまず教員に報告することからスタートする。そして,まずそのプログラムが評価可能であると教員から判断される必要がある(フェーズ1)。その後,フェーズ5までの段階を踏み,最終的に評価計画書が提出される(Darabi, 2002, p. 221)。  各フェーズの概要

Darabi, A. (2002). Teaching program evaluation: Using a systems approach. American Journal of Evaluation, 23, 219-228.

学部・大学院におけるプログラム評価の学び:体系化のための課題と展望
安田節之 慶應経営論集 (渡辺直登教授退任記念特集号) (印刷中) 2016年