コミュニティ心理学研究の教育開発(メモ)
コミュニティ心理学(CP)研究に関する教育はもとより,CP全般の教育の在り方を考えるうえでは,学習者はどのような学びを行い,何を習得すべきか。これはCP研究における学修成果(ラーニングアウトカム)を明示することに他ならない。どのようなラーニングアウトカムが妥当であるかは,CP教育全般の問題に帰するため多面的な考察を要する。しかし,あえてそれを端的に言うと,学習者が教育を受けた後に「コミュニティ心理学について知っている(‟knowing about community psychology”)」ではなく,「コミュニティ心理学者のように考え行動する(‟thinking and acting like community psychologist”)」ことが出来るようになることと言える(O’Sullivan, 1997)。これは,CPの学びが従来の知識習得を目的とした心理学の学びとは異なる点が多いことを意味している。
それでは「コミュニティ心理学者のように考え行動する」,さらに研究(リサーチ)のなかでそれを実現するためには,学習者に何をどのように伝えれば良いのか。例えば,アメリカの独立型のCP研究科(free-standing community psychology programs)の学修カリキュラムでは「学習者がコミュニティ,組織,集団,個人の相互作用について検証すること」や「社会問題とその解決法について批判的に考えること」などが学びのゴールとして掲げられている。これらのゴール達成のために,「研究法はもとより,具体的な社会・コミュニティ介入の開発と評価に関する学びを行うこと」に焦点が当てられてきた(Gensheimer & Diebold, 1997)。
このようにCP研究における教育・トレーニングには,多様な個人やコミュニティが直面している課題を理解し研究の俎上にのせると共に,課題解決に向けた取り組み(介入・プログラム)の開発や評価の在り方を探求することまでが守備範囲となる。それらを実現すべく,方法論横断的な学びとそれに向けた教育開発が必要となるのである。
安田節之(2017, pp. 174-175) 『コミュニティ心理学研究の質を高めるための教育開発:何をどう伝えるか (特集: コミュニティ心理学の教育実践)』 コミュニティ心理学研究 20(2) 174-183.