評価に関するメモ

従来の学校でのテスト(例:期末テスト)は,実験デザインの枠組では1群事後テストデザイン(記号: ”×〇”,×=介入,〇=測定)と位置づけることが可能である。しかし,この1群事後テストデザインは,有用性が極めて低いとされる実験デザインである。知識の習得や行動の変化に関する効果測定には,事前のベースラインの測定が必要であるため,少なくとも事前と事後の測定が必要となるからである(例: “〇×〇”)。

1群事後テストデザインの有用性が唯一高くなるのは,事前テストの結果が「ゼロ」(例:全員が授業を受ける前にはその知識を持っていなかった)と仮定できるときのみである。これは評価の対象(例:児童・生徒・学生の学び)が,習得した知識量などの「絶対量」であるべきか、あるいは学びの過程などの「変化量」であるべきか,についての問題につながる。

個人的・社会的要因により,事前テストですでに満点の人,あるいは事前ゼロで事後満点の人,事前・事後ともにゼロの人など様々な仮想的ケースが考えられる。また広くプログラム(=授業や教育課程)の質の影響などをどう考えるかについて,授業などでディスカッションになることが多いのでメモしておく。前述した絶対的,相対的(変化量)な視点はどちらも妥当なので毎回,結論は出ない問いでもある。