ラボでの事例検討会の可能性

コミュニティ心理学諸領域はもとより,さまざまな組織・コミュニティへの介入研究が盛んになるなかで,プログラム評価の意義や役割を検討・再検討する必要が出てきている。プログラム評価は従来の心理学研究法や社会調査法との親和性が高いため,それらを応用することにより,意外とスムーズに行える部分が多い。例えば,実証的なプログラム評価であれば,事前・事後データに基づく効果測定をしたり,もし可能であれば,統制・比較グループを設置して介入の有無による効果の違いを評価したり,さらに可能であれば,グループへの参加者の無作為化を行いランダム化比較比較実験(RCT)といったより高度なデザインを活用したりするなどがある。これが評価方法に焦点を当てた考え方である。

ひるがえって,介入活動としての「プログラム」に焦点を当てると,目的や参加者,実践の社会的・経済的な背景,そして評価の考え方や必要性など,当然ながら,それぞれのプログラムが個別具体的な側面をもっている。よって,プログラム評価を設計するうえでは,各プログラムの‟個性”を見極める必要が出てくるのである。プログラム事例を“どのように評価すべきか”を検討することにより、その個性がより明確化されることになる。個別支援(例:カウンセリング)の方法(論)を学ぶ際には事例検討(ケースディスカッション)が重要であり,心理臨床家を始め,多くの支援者は事例検討から支援方法を学ぶことが多いと考えられる。同様に,プログラムの事例検討を行うことは,評価者の評価方法の知識やスキルを向上させるうえで,つまり評価のキャパシティビルディング(evaluation capacity building)を行ううえで,重要な役割を果たすと言える。

「プログラム評価ラボ」の今後の展開として,多様なプログラムの開発・実践に携わっている実践者および評価研究者で,そのプログラムの評価をお考えの方々の事例を参考にしながら,実際の評価に活用可能な方法論やアプローチについてディスカッションを行う「事例検討会(仮称)」などを企画できればと考えている(⇒第1回