コミュニティ心理学研究の学び(ステップ2:CP理論・概念の学び)

ステップ2では,前段階の検討内容を踏まえつつ,CP研究を計画するうえでの羅針盤となるCP概念や理論についての学びが行われる。ここで最も重要なのは,CP研究とは何であって,逆に何でないのか,という点の理解を促すことである。

実際,CP研究をCP研究たらしめるものは何か。それは研究発想の源泉であり,実践や援助につなげるための研究ビジョンである。つまり,CP研究そして実践は,先にみたエンパワメントやコミュニティ感覚,そして人と環境の適合(社会生態学的視座),予防的視座,社会正義,多様性の重視といった考え方の枠組み,つまりCP理論に基づいていることが必要条件なのである。逆に,当該研究がCPが拠って立つ理論に基づいていなければ,それはCP研究とは言えない。

前述のとおり,CP全般の教育開発では,学習者を「CPについて知っている」という学びのレベルから「コミュニティ心理学者のように考え行動する」というレベルに昇華させることが目的となる(例:O’Sullivan, 1997)。したがって,ステップ2においては,CP研究への準備性を高める第一歩として,問題や課題を“CPのメガネ”で捉え,それをCP研究のリサーチクエスチョン(研究課題・解明課題)に沿って実現することが目指される方向となる。したがって,ステップ1における視点①と視点②を参考にしつつ,ステップ2では「不適応を起こしていると想定される個人の経験を捉えるためにはどのようなリサーチクエスチョンが設定できるか,そしてどのような研究アプローチが活用できるか」(視点③)について検討するという試みが考えられる。

紙幅の関係上,CPの枠組み(例:理論・概念)の説明は省略するが,特にCP研究におけるアプローチを考えるうえでの基本となる社会生態学的視座は下記の通りにまとめられる(参考:Levine & Perkins, 1997,p. 144-146):

  1. コミュニティ心理学において解決すべき問題は,個人ではなくその個人を取り巻く,場(setting)や状況(situation)であり,それらに存在する要因が問題を引き起こす原因となっている。
  2. 問題が解決しないのは,問題解決のための機能(adaptive capacity)がブロックされているからである。
  3. 有効性・効率性を高めるため,生じている問題に対するストラテジー(strategy)が必要である。
  4. 介入のゴールや価値基盤は,援助者のものではなく,場や状況におけるゴールや価値基盤に沿ったものでなければならない。
  5. 自然発生的な場の資源(the natural resources of the setting)や意図的な介入プログラムの創造によって,介入はシステマティックに行われるべきである。

ステップ2は,CP研究に関する学びの根幹をなすものであると考えられるため,適切な事例やケース教材などが整備され,上記の5つの視点などを参考にリサーチクエスチョンや仮説の設定の練習を行うことが大切である。それが,学習者のCP研究の在り方についての学びを深めると共に,次のステップへの有効な橋渡しとなる。

安田節之(2017,p.176-177)コミュニティ心理学研究の質を高めるための教育開発:何をどう伝えるか コミュニティ心理学研究   20(2) 174-183.